実務では、次のようなトラブルが実際に起きています。
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マルウェア感染
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情報漏洩
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更新忘れによるデータ破損・消失
これらは、
「何もしていなかった」ことが原因で起きるケースも多いです。
保守・運用の価値は、
何も起きなかったときほど見えにくいものです。
実際に私たちの対応してきたトラブルを通して保守・運用の大切さを学んでいきましょう。
Case1 | マルウェア感染
「何もしていなかった」ことで起きたトラブル
■ 相談者の相談内容
ある日、クライアントからこんな連絡が来ました。
「自分のサイトを開くと、
まったく関係のないサイトに飛ばされてしまいます。
これは何が起きているんでしょうか?」
実際に確認してみると、
サイトのリンクをクリックした際に、
第三者のサイトへ強制的にリダイレクトされる状態になっていました。
■ 起きていた問題
このケースでは、
サイトがマルウェアに感染し、
外部から不正なコードが埋め込まれていました。
原因をたどると、
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WordPress本体・プラグインの更新を長期間していなかった
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セキュリティ対策を特に行っていなかった
という状況がありました。
つまり、
「特別なことをしていた」のではなく、
「何もしていなかった」ことが原因で起きたトラブルでした。
■ 解決のために行った対応と費用
(実際にクライアントへ提案・請求した内容)
このトラブルに対して、
まずは被害の拡大を止め、復旧するための対応を行いました。
実施した主な内容は以下です。
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サーバー・ファイルの調査
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不正コード・不正ファイルの確認
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サーバー側バックアップを利用した復旧作業
幸い、
サーバー会社(Xserver)の自動バックアップが残っていたため、
サイト自体は復旧することができました。
ただし、
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どこまで影響が出ているかの確認
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安全に復旧できるかの検証
といった調査作業には時間がかかり、
スポット対応として費用が発生しています。
実際の請求内容
・サーバー・ファイル調査費用:8,000円
・Webサイト復旧作業:30,000円
合計:38,000円(税込)
■ 心理的な負担と実費の現実
このように、
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サイトが突然表示されなくなる
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ウイルス感染の可能性がある
という状況になると、
クライアントは強い不安と焦りを感じます。
「情報は漏れていないのか」
「このまま直らなかったらどうしよう」
「事業に影響が出ないだろうか」
といった心配が一気に押し寄せます。
さらに、
今回は復旧できたケースでしたが、
状況によっては調査・復旧・再発防止まで含めて
数万円〜十数万円の費用がかかるケースも珍しくありません。
■ このケースから学べること
このケースから分かるのは、次の点です。
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トラブルは「起きてから」では遅い
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復旧よりも、事前の対策の方が圧倒的にコストが低い
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セキュリティは「何かあったとき」ではなく「何も起きないため」に行うもの
実際、この復旧作業後には
クライアントに対して セキュリティ対策の提案資料 を提出しました。
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WordPress・プラグインの定期更新
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セキュリティプラグイン導入
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自動バックアップ設定
などをまとめて実施することで、
再発リスクを下げるための体制づくりを提案しています。
Case2|更新忘れによるデータ消失
■ 相談者の相談内容
ある日、クライアントから次のような連絡が入りました。
「サイトが急に表示されなくなりました。
元に戻せますか?」
確認を進めると、
サーバー契約の更新期限がすでに過ぎており、
サイトは停止状態になっていました。
■ 起きていた問題
調査の結果、次の問題が分かりました。
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サーバー契約の更新忘れ
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サーバー側のバックアップ保持期間が終了
その結果、
サイトのデータをすべて失ってしまっている状態でした。
復旧を試みましたが、
サーバー上にもローカルにも有効なバックアップが残っておらず、
元の状態に戻すことは不可能でした。
■ 解決のために行った対応と費用
このケースでは、
データ復旧では対応できず、
サイトを一から作り直す必要がありました。
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構成の再設計
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デザイン制作
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WordPress構築
を改めて行うことになり、
制作費として約50万円がかかりました。
「更新を忘れただけ」で、
これだけのコストと時間が発生してしまった例です。
■ このケースから学べること
この事例から分かるのは
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サーバー・ドメイン更新管理の重要性
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定期バックアップがないリスクの大きさ
Case3|無料で請け負いすぎたことで起きたクライアントトラブル
〜「修正」の線引きをしなかった結果〜
■ 状況
HPの全ページが公開された後、
クライアントから「修正したい部分がある」という連絡が続きました。
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テキスト修正
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デザインの調整
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構成の変更
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新しい機能の追加
いずれも
「修正作業」という言葉で依頼され、
明確な追加見積もりや契約の見直しをしないまま、
無料で対応を続けてしまいました。
■ 起きていた問題
問題は、
「修正」の範囲が少しずつ広がっていったことです。
というように、
実際には新規制作に近い内容まで含まれるようになっていました。
しかし、
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対応範囲
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完了の定義
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無料でどこまで対応するのか
を明文化していなかったため、
お互いの「ここまで」の認識がズレていきました。
■ 限界を伝えたときに起きたこと
対応が限界に達し、
「これ以上は対応できない」と伝えたところ、
クライアントから次のように言われました。
「まだホームページは完成していない。
作業が残っているのに、途中で投げ出した。」
結果として、
他の制作者に依頼する際に発生した費用を
こちらに請求される事態になりました。
■ このトラブルの本質
このケースで起きた問題は、
契約書がなかったことではありません。
実際には契約書は交わしていましたが、
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修正の範囲
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作業範囲
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「完成」の定義
といった点について、
書き方が曖昧だったことが原因でした。
そのため、
「修正」と「追加対応」の線引きができず、
お互いの認識にズレが生じてしまいました。
■ 本来、明文化すべきだったこと
このケースから分かったのは、
「制作」と「保守・運用」をはっきり分けて伝える必要があるということです。
本来は、次のように明文化しておくべきでした。
・制作は「全ページ公開・初期表示確認」まで
・公開後の修正・変更・追加対応は保守・運用契約で対応
・保守契約に含まれない内容は都度見積もり
こうしておくことで、
「どこまでが制作なのか」
「どこからが保守・運用なのか」
を、お互いに同じ認識で持つことができます。
■ このケースから学べること
この経験から学んだことは、次の通りです。
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無料対応は、感謝ではなく「期待」を生む
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線引きをしない優しさは、トラブルにつながる
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契約は、信頼関係を壊さないためにある
保守・運用契約や対応範囲の明文化は、
クライアントを疑うためのものではなく、
お互いを守るための仕組みです。